ガレストロ考
暑くなるとビールに負けじと、冷やして美味しいワインがワインショップにでてきます。今年も見ました。それは、エノテカ社が販売するカプスラ・ヴィオラ(Capsula Viola)の2014。近年、トスカーナの名門アンテイノーリ社のカジュアルブランドのサンタクリスティーナの一部となりました。トレッビアノーをベースとして、ピノグリージョやシャルドネをブレンドしています。フレッシュさが身上で、きっちり冷やして美味しいワインです。さて、このワインですが、かつては「ガレストロ(岩石混じりの土壌の呼び名)」と呼ばれていました。この名前でピンとくる方は、かなりワイン歴が長い証拠です。詳細は略しますが、かつてキャンティを作るのに使われていた白ブドウが、上品質の黒ブドウだけでつくることが法律上認められるようになり、生産者がもて余していた白ブドウ(トレッビアーノとマルヴアジア・デル・トスカーナ)の余剰対策として作られた経緯があります。アンティノーリ他、フレスコバルディ、リカゾーリ、ルッフィーノといった大手がガレストロワイン協会を組織していました。2000年以前には、シャバシャバの水のようなワインで味わうより喉を潤すワインでしたが、トスカーナの暑い夏にはなかなか美味しいものでした。近年、白ブドウが黒ブドウに植え替えられるにつれ、余剰白ブドウが減少して、「ガレストロ」はその使命を終えました。アンティノーリは、ガレストロから離れて、より上級のワインを目指し、シャルドネ他の香のよいブドウをブレンドしたのです。少し上品になりはしたものの、ガレストロ当時からのニックネームのカプスラ・ヴィオラを彷彿させる味が残っているのは、喜んでいいのかどうか、迷います。因みにトスカーナでは、今でもGalestroと注文しても通じます。こんな歴史を知っていると、この種のワインは興味深く飲めますね。